朝日の光が周辺の海面や奇岩・洞窟にそそぐと、眩しい五色の光となって輝くように見えたことから、京の錦織の名をかりて「錦ヶ浦」と呼ぶようになりました。ここには源頼朝、加藤清正といった歴史的人物にまつわる伝説や、独特な形態を持つ奇岩・洞窟、そして成島柳北、佐伯孝夫などの作家が愛した青い海が広がります。
錦ヶ浦は熱海市の中部あたりの海岸に位置し、約2キロメートルに及び高さ約80メートルの断崖が続く名勝です。熱海市の内陸側には湯河原火山、多賀火山、宇佐美火山があることから、隆起してできた地形と考えられています。地形上の理由から荒波に浸食され、熱海市はその名残を残している町と言われています。兜岩・基盤岩・烏帽子岩・弁天岩などの有名な奇岩は、この伊豆に打ち寄せる荒波が年月をかけて生み出した自然の芸術なのです。
読んで字のごとく、馬の背中に形が似ていることから「馬の背」と呼ばれる岩礁地帯も特徴的です。岩のわずかな隙間に松が根を張り、その下には大きな裂け目、そしてさらに2つにわかれています。それぞれ「胎内くぐり」「頼朝の犬くぐり」と呼ばれ、神事が行われたり、伝説として言い伝えられたりしています。
この錦ヶ浦の地形の恩恵を受け、多くのウミウ(海鵜)が生息しています。外海の岩礁地域を好み繁殖する生態を持つウミウにとって、ここは理想的な環境と言えます。そのため、10月~3月にかけて、シベリアより越冬するために熱海にやってくるのです。翼を広げれば約1メートルにもなる大きさは、遠くからでも視認できるほどの迫力があります。
熱海は見どころが多く点在し、中でも錦ヶ浦は自然を強く感じることができるスポットです。別荘を拠点にすれば、移動も簡単になり、ゆったりと過ごすことができるでしょう。